「泣くのはいいけど、街中で泣くのは勘弁してくれよ。俺が泣かしたみたいだろ」
そう言って連れて来てくれたのは
大学時代によく利用していたバー
半個室があり
人目を気にすることなく呑めるし
大勢で騒げる個室もある
帰国してから
優司は何度も利用しているようだが
マスターは私を見て驚きを隠せないでいた
…が、私の顔を見てニッコリ笑ってくれた
『…優司は、いつでも優しいね』
ニュージーランドで暮らしていた時も
私が婚約解消を求めた時も…
「そうか?紗枝が思っている以上に腹黒いぞ」
『腹黒いって、』
優司には似合わない言葉に
笑ってしまった

