まさか同じ路線だったなんて…
大きな誤算だ
「あれ?紗枝さん?」
その言葉にハッとした
いつも立たない
電車の出入り口に立ってしまった
おはよう、と声をかけてきたのは奏くん
今日は一人だ
『彼女は?』
「今日は休みなんです。親子遠足なんで」
親子遠足と言う言葉に思い出した
彼女はバツイチ
それは孝から聞いていた
奏くんは初めから
彼女がバツイチで
シングルマザーだと知っていた
知った上で付き合っていると
『可愛い?』
皮肉ではなく
疑問に思ってしまった
好きな女の子供でも赤の他人
他の男の子供なのだ
けど、奏くんは
クシャッと笑いながら
溺愛中です、と言った

