友人が言う小鳥遊くん
それは奏くんのことではない
プロポーズをされ
きちんと親の仏壇に挨拶をしてくれた彼
奏くんの兄の方だ
将来は大学教授か、と
変な期待をしていたから
婚約破棄になったと告げた時
養父が亡くなった後
親代わりをしてくれていた会長は
とても残念がっていた
ニュージーランドの家を出てから
彼には会っていない
帰国し、多分大学に戻っているはずだが
会いたいとすら思わない
あの頃の気持ちは
なんだったんだろうか…
「紗枝さん、今度食事に行きましょうよ」
『嫌よ』
これもいつものこと
久慈くんの誘いに乗ったことはない
私となんか食事して
変な噂が立ったら
久慈くんが可哀想だ

