電車を降り
二人の姿が見えない事にホッとし
歩き出した私
「紗枝さん、おっはようございます」
陽気な声と
走り寄ってくる足音が聞こえた
振り向けば久慈くん
『おはよう、久慈くん』
私の隣を歩き始めた久慈くんに
挨拶を済ませ、会社へ向かう
「今日も綺麗ですね」
挨拶かのように発する言葉に
今日は少しイラっとしてしまった
『久慈くんさ、そういう事を誰にでも言うのやめた方がいいよ』
勘違いされるだろうし
久慈くん自体軽く見られるだろうと
人生の先輩からの注意のつもり
でも久慈くんは
何言ってるんですか、と笑い飛ばした
「俺、紗枝さんにしか言ってませんよ」

