「茶南(さな)ー、何人くらい集まった?」

外で勧誘をするために声を張り上げていた友達が戻ってきた。私の前にある紙をすっと持ち上げて目を通す。そして、すぐに表情を明るくした。

「思ったより来てるじゃん! やった……ごほっ、ごほ」

彼女は紙を投げ捨てそうなほど勢いよく腕を振って言った後、咳の音を部屋に響かせた。その姿に驚きつつ、彼女の背中をさする。

「ちょっと大丈夫!?」
「う、うん。大きな声出してたから喉が変になったみたい」
乱れた呼吸を整えながら彼女が言う。
そっか、と言いかけて自分がのど飴を持っていることを思いだした。

「あ、私のど飴持ってるけどいる?」

バックを漁りながら聞くと、彼女は頷いた。


「ピロピロピロリン」

その時、電子音が流れた。自分のスマートフォンを見たが、通知はない。
どうやら目の前にいる友人のところにメールが来たようだ。

彼女は一通り読むと「もう行かなきゃ」と言い出した。
恐らく彼氏に呼び出されたのだろう。いかにも、女の子、という感じの表情をしている。

後は頼んだ、と手を振って去っていく彼女を呼び止めて、のど飴を渡した。

「ありがとう。ごめんね、明日はしっかり出るから」
申し訳なさそうに顔の前で手を合わせたのち、彼女は再び去っていった。