急に雨が降り始めた。それも結構激しい雨。

まさか、下校中に降るとは思ってなくて、今日は傘を持ってきていない。


「もう! 天気予報外れてるじゃん」

夜から降り始めると言っていた天気予報に文句を言う。

ここから家までは走っても10分くらいかかるし、学校に戻るのにも同じぐらいの時間を要する。私はどこかで雨宿りすることを決めた。

「でも、どこで……」

そう言いかけて、思い出した。この道の先に、今はもう閉まっている商店があることを。そこの表には屋根がある。その下なら十分に雨宿り出来るだろう。

いつもなら右折する交差点を駆け抜け、私はそこへ向かった。


「ハァ、ハァ」
息を荒くしながら屋根の下に入る。雨が降り始めてから今まで、時間にすれば約3分程だったが、私の制服は結構濡れてしまっていた。この時期のこういう雨は本当にタチが悪いから嫌いだ。



「うわぁ、もうビショビショだ」

1人の男の子が大きな声を出しながら屋根の下に入ってきたのは、私が乱れてしまった前髪を直し始めた頃だった。男の子は私を見ると、笑って一礼した。

「雨やばいよね。めっちゃ濡れちゃった」
そして、なぜだかフレンドリーに話しかけて
くる。一応言っておくが、私と彼は初対面であ
る。

「そうだよね。私もビショビショでヤバイ
もん」
だが、私は人見知りしないタイプなので、同じテンションで返す。変に意識されている感じも無かったし、特に深い意味はなく話しかけてきたのだろう。わざわざ警戒したり、素っ気なくする必要はないと思った。多分同い年なので、敬語を使うのもナシだ。男の子は軽く笑いながら頷いた。


その後、私たちは一定の距離を開け、道路の方を見ながら立った。激しい雨の音だけが響いていた。