「やぁ、白木さん。今日も相変わらず美しい」

「あら、どちら様でしょうか」

「白木さんは、うっかり屋さんだな。僕の名前は八王子瑠衣さ」

このやりとりは3年生の廊下で行われている。ちょうどHRがおわり部活に向かう者や帰宅する者で生徒はたくさんいる。そのため非常に目を引く光景だ。しかし多くの生徒は何事もないように、それぞれのことを行う。それは日常的なことだからだ。

「白木さん、白木さんの美しさは天から星が落ちるくらい。そして白木さんの名前である、みどりも美しさを表しているね。自然を愛し慈しむ。華道部部長の白木みどり。あぁなんて美しい。白木さん、僕と共に愛の世界へ飛び立たないかい?」

どこからもなく薔薇を差し出し出す。

「お断りしますわ、失礼致します」

「そんなこと言わないで、白木さん。ほんとは照れてるだけなんだろう」

そう白木に向かいウインクをする。

「僕とカフェに行こう。お互いのことを理解するために。アモーレ」

その一言により、白木の中で何かが崩れ落ちた。

「あら、斎木くん。急ぎの用のところ悪いけど、ちょっと」

がしりと腕を掴まれる男子生徒

「白木さん、ちょっと俺、委員会なんですけど」

「風紀委員会でしょう?でしたらこの男を取り締まってくださいな。迷惑ですから」

「えっ、いやすぐに委員会に行かなきゃ、叱られるんで」

冷や汗がダラダラとかいている斎木を見て多くの人は哀れに感じた。

「じゃあお願い致しますね」

有無を言わせない空気を出し、斎木は思わず肯定の意を返した。

「君は白木さんの恋人かい?邪魔はさせないさ」

「いや、違いますから」

「またまた、そんなこと言って出し抜くつもりだろ。白木さんのことは諦めてくれないかな?僕はなんたってプリンスだからね」

そう言いキラーンと目を光らせた。

斎木は無視をして急ぎ委員会に向かった。

そして明日も白木と八王子のこのやりとりは続く、明日は斎木のような被害者が出ないことを多くの人は望むのだった。