「聞きましたよ、和也さん。相変わらずモテモテですね。ホワイトデーどうするつもりですか?受付嬢のひとみちゃんと!」

昼休みに入った瞬間、隣の席の後輩の山田が、ニヤニヤしながら訊いてきた。

そろそろ来ると思っていた。

「悪いけど山田、頼まれてくれ。適当になんか買って渡して、付き合う件は無理だって伝えて、諦めろって説得してくれ」

先月のバレンタインデーの日、いくつかチョコレートを貰ったが、明らかに義理と思われる中に一つだけ手作りがあった。

そのチョコには手紙が添えてあって、、、
長文すぎて覚えてはないけど、返事はホワイトデーまで待つとか、そんな内容が書かれてた。

「和也さん、マジで言ってます?それはさすがにあんまりですって。そもそも無理ってどういうことです?受付嬢のひとみちゃんですよ?」

手紙の最後に名前があった。
確かにひとみと書いてあったけど、顔も浮かんでこなかった上に、いまだに名字も思い出せない。

「人気があるのは知ってるよ?同期の飲みでも話題出てたし、本気の奴もいるみたいだったし。アイドルなんだろ?うちの会社の」

「それが理由ですか?」
「え?」

「同期でひとみちゃんを本気で狙ってる人がいる。それが理由ですか?」
「別に、それが理由ってわけじゃないけど」

「じゃあ、なんでダメなんです?」
「…なんでって」