俺が愛した、あおいの話

「名前以外って、どんなことですか?」
ひとみちゃんが食い気味に訊く。

飲んでるお酒は同じ物なのに、彼女は全然酔ってない。

「東京から来た転校生とか…」
「だから和也さん、今東京に?!」

「卒業してすぐこっちに来たわ。蒼井のことを探す為に」

高校二年の最後の日、蒼井は突然姿を消した。

和也は春休みが明けたあとも、家の中に閉じこもってた。

朝も帰りも休みの日にも、わたしは何度も訪ねて行ったが、部屋には鍵が掛かっていて、返事も聞こえてこなかった。

そんな日々がしばらく続き、諦めかけてたその頃だった。近所の本屋で和也を見つけた。わたしはすぐに声をかけた。

「どうしたの、あんた…なにしてんのよ」
思わず涙が溢れてしまった。

「ごめん、まじで。心配かけた」
和也はそう言って笑った。

「いつもの和也に戻っていたわ。わたしの知ってる和也にね。蒼井が消えてしまったあの日から、まるで別人みたいだったから。これでもう元通りになるって、諦めることができたんだって…。あの時はそう思ってたんだけど、なんか全然違ったわ」

和也は本屋で本を買ったあと、一緒に帰ろうと言ってくれた。

わたしは大きく首を縦に振り、そうしようと笑顔で言った。

久しぶりだな、こういう感じ。そう思いながら隣を見上げた。その時だった。真剣な顔で、和也は語り始めたのだ。

「蒼井のことが好きだった」