それに対してあたしは、数学が苦手な平凡女子。

ちなみに彼氏募集中。

タイプは…切れ目のイケメン?

あ、もちろん、肇以外ね♡


あたしと肇は正反対。

親にも隣に住んでるのにどうしてこうも違うのかしら~なんて言われちゃう。

あたしに聞かないでよ、あたしに。

あと、黙ってれば可愛いのにとか言われる。

……それって、褒めてるの?貶してるの?


「はぁ~……」


乙女の悩みは…


「乙女の悩みは尽きない、とか考えてるんだろうけどさ、勉強しないなら帰れよ」


呆れたようにぼやく肇を、ニヤニヤしながらビシッと右手の人差し指で指した。


「出た、肇のテレパシー」


あたしがそう言った瞬間嫌そうな顔する肇。

これも、あたしたちの恒例。

さっきまで忙しなく紙の上を動いていたシャーペンが止まってる。


「何も出てねぇよ、おま「お前の考えてることが分かりやすすぎるんだよ…でしょ?」


あら~眉間に深~いシワ。


「そんな顔してたらイケメンが台無しですよお兄さーん?」


人差し指で眉間をぐりぐり、あれれ、更に深くなってない??

ぱしりと、眉間の方に伸ばしていた右手の手首を捕まれて離される。

あれ、それってなんだか、怒ってる顔?


「もう帰れ」

「え、ごめん、あたし何かした?」

「何もしてない。何もしてないから帰れ」

「えぇ~……もうちょっといたっていいじゃん」


解放された右手でシャーペンを取って、くるくる回した。

ちらりと肇を見ると、ものすごく不満そうな顔。

本当にあたし、何かしでかした?

でもこれ以上聞くのって、逆撫でするだけだよね?


って、


「ひゃあ!ちょっと、なに!?」

「言っても聞かねえんだから、力づくしかないだろ」

「ちょ、歩ける!歩けるから!」

「知ってる」

「降~ろ~し~て~~!」


気がつけば、痺れを切らした肇に、俵担ぎされていた。

そのまま、部屋のドアから外に出て降ろされた。

降ろし方が、焦れるくらいに慎重で、つい背中をパシパシ叩いてしまった。


……なんでそこだけ優しいの。


「ねぇ、あたしの勉強道具!」

「……どうせしないだろ」

「するよ!?だって夏休みがかかってるもん!」

「…はぁ、絶対そこから動くなよ?」


……いや、それで素直に動かない人もなかなかいないと思うよ?

あたしはいい子だから待ってるけど。


その後、無事あたしの勉強道具たちは届けられ、あたしは渋々帰った。


だから、あたしがいなくなった部屋の中



「彼氏なんか要らねえだろ」



ぽつりと呟かれた言葉は知らない。