今の反応で私が好きだって自覚したのバレちゃったかと思った。


あ、いや、別に、バレたくないとかそんなんじゃないんだけど。


バレたらバレたで面倒臭いなって思うけど。



「アイツさぁ」

「アイツ?」



新しい話題に一生懸命頭を働かせながら、平然を装う。



「アンタの好きな窪原(くぼはら)よ」

「っあ、あぁ、うん。あの人が何?」



平然を装って、いつもと変わらない態度を心掛けながら返事をする。



「アンタのこと好きじゃないの?」

「はぁ!?」

「え、」

「あ、」



しまった。直感的にそう思った。


いつもの私なら、こんな事で大きな声を出したりしない。そう、絶対に。


それが今やあの仁さえ驚くくらいの大きな声……はぁ…。


やっちまった。


小さく溜め息をついた後平然を装いながら席を立つ。


時計を確認するフリして視線をあげる。



「ねぇ仁、そろそろ帰らない?」

「いや、話はまだ終わってない」

「作業が終わったら帰るべきよ」

「あたしの中の作業はまだ終わってない」

「意味分かんないし。帰るよ」



アホな仁に半ば無理矢理鞄を渡し、廊下まで連れて行く。