隣で俺にどうしたの?と聞いてくる凛に微笑んでポケットからスマホを取り出す。


俺の意思関係なく登録された番号が1つ表示され、少し緊張しながら発信ボタンを押した。


―――プルルルル……


―――プルルルル……


―――プルルッ…



『もしも〜し?』

「あ、出た」

『んん? 初めて聞く声?え、待って、誰…?』

「誰とか失礼すぎだろ…。 俺の意思と関係なしに自分の番号登録したの誰だった?」

『うーーーん……あっ!窪原!!』

「……はぁ…そうそう」



俺と佐々部の話が聞こえるらしい凛は、隣で少し声を上げて笑っている。


……何がそんなに楽しいわけ?


俺は目で訴えながら凛の手を取った。


一瞬硬直した凛に小さく笑い、佐々部に用件を伝える。



「佐々部、今から大楠さんと自主早退して来て。 あ、でも、凛の鞄も忘れんなよ」



簡潔に。馬鹿の佐々部にも伝わるくらい簡潔に話した。



『…ん? どういう事だ??』



つもりだったけど……思っている以上に馬鹿…? 困った顔で凛を見れば笑いながら手を出してくる。


無言でスマホを渡せば今度は凛が佐々部と話す番。



「ねぇ後、仁に変わってみて」

『あっ、凛じゃーん! 2人して今どこ?』

「いいから早くしてよ」

『ぅう〜……仁、凛が変われってぇー』



渋々大楠さんにスマホを渡してる佐々部が簡単に思い浮かんで口元を綻ばせたと同時に、スピーカーから大楠さんの声がした。



『ちょっと凛! 大丈夫なの!?』

「うん、大丈夫。ごめんなさい、心配かけて…」

『凛が大丈夫ならそれでいいのよ! で、どうしたの?』



大楠さんの質問に、俺が何を考えてるのかなんとなく分かっていた様子の凛は同じく簡潔に伝えている。