「だって、そんな簡単にやめられないでしょ?」

「………それは…」

「暖は、違うの――…?」



―――俺は…っ。


俺だって、凛が好きで仕方ない。 けど、この一線を超えるってことは、凛の、俺の母親を裏切るも同然なんだぞ?


そうすればお前はまた、泣くんだろ――?


そんなの、耐えらんねぇよ……。



「俺は、お前を泣かせたくない。それだけだ」

「………」

「俺たちの事を考えればきっとこの先、お前は泣いてばかりになるだろうから…だから俺は……」

「じゃあ、側にいてよ…!!」

「っ!」



大きな目にいっぱい浮かんだ涙。


――……あぁ、そうか。 凛は俺と一緒にいることを望んでくれるんだな…。


小さく嗚咽を零しながらも必死に何かを伝えようとしてくる凛を見て、俺の目頭も熱くなる。



「私は!…っ、暖が側にいてくれるなら……それだけでいいん…だよ…!」

「うん……」

「だから……お願いっ…側にいて……っ…」

「っ凛!」



自分が思う以上に、凛は俺を好きでいてくれた。


それを知ってしまった俺の意思はもう制御なんて出来ない。


小さくて、すぐに折れてしまいそうな凛の身体を大切に大事に、抱き締める。


これから先凛を1番泣かしてしまうのはきっと俺で。だけどそれと同時に、凛の側に1番いたいのも絶対に俺だ。


だからもう迷わない。


俺は凛の側にいる。



「なぁ凛……これから先ずっと、俺の側にいるって約束してくれるか…?」

「暖ってバカ……」

「…は?」

「そんな当たり前のこと聞かないでよ!」