どれくらい経ったんだろうか。数十分?……いや、たったの数秒かもしれない。 でも、今の俺にはとてつもなく長く感じる沈黙だった。
「なんとなく気付いてた」
「……え?」
鼻を啜りながら、必死に声が震えないように話を切り出した凛に目をやると、真っ直ぐ目の前の現実を受け止めるかのように話し始めた。
「暖とお母さんと会ったあの時から、なんとなく気付いてたんだと思うの」
「………」
「2人の雰囲気って言うか、本当に、なんとなく」
「………うん」
何も言えない俺に凛は少し笑ったように感じる。
「そっか…。私は、暖と異父兄弟って事になるんだね……。そっか………」
自分に言い聞かせるように、小さく、静かに繰り返す凛に目頭が熱くなった。
ごめん。
好きになってごめん。
本当は、今すぐ抱き締めたいくらい好きなんだ。
どうにでもなればいいと。 この世界に凛さえいてくれればいいと思えるほど好きで堪らない。
―――それでもこの事実と言う足枷が、俺を留めておいてくれるんだ。
「やめろ」と。
「抑えろ」と。
俺が凛の隣にいられるのは、"友達"だからであって。 決して"兄妹"だからじゃないんだ…。
だから俺は、お前に好きだなんて言えない。
一生、言っちゃいけないんだ。
俺とお前は、友達でしかいられないんだ……っ。
「――り…」
「暖!」
悲しく、綺麗な凛の瞳に、俺が映った。
「ごめんね、暖。 私、やっぱり、それでも、暖が好きで仕方ないや……」
「っ!」


