……何から話せばいいのか。 どこから話せばいいのか。
ひとつ、大きく深呼吸をした。
「……もう、俺と凛の母親が知り合いなのは分かったよな」
「…うん」
どう言えばいい?
凛はきっと、何も知らないはずだ。 俺が泣かさないように、悲しませないように話さないといけないんだ…。
けど、どうすればいい――…?
頭を駆け巡るのは小さい頃の記憶。
思い出したくはない、思い出してはいけない、楽しかったあの日々の記憶だった。
「凛の母親の喜(きさき)さんは………俺の母親でもあるんだ……っ…」
「――――……え?」
……無理もないよな…。
誰だって信じたくないだろう。友達の母親が自分の母親だなんて。
だけど事実で、これが真実なんだよ。 喜さん……母さんも黙っていたって言うことは、そういう事なんだろう。やっぱり俺は生まれて来ちゃいけない存在なんだ…。
何も言ってこない凛に恐る恐る視線を向けた。
「……っ」
「っ、!」
やっぱり、泣いてるよな。
静かに、嗚咽を堪えるように、綺麗な涙を流している。 ごめん、ごめんな、凛……っ。
俺がこんな事言わなけりゃ良かったんだよな。
でも、今更"忘れてくれ"だなんて言えるわけない。そんな事、言えねぇよ……。
本当は俺だってずっと苦しかったんだ。
知ってたから。
俺と凛の母親が同じだということを。


