大楠さんが大切だからか?


凛が幼なじみだからか?


分かるようで分からない答えを俺が求めてしまった。



「んー…だって俺、仁も凛もすっげぇ好きだし大切な幼なじみだと思ってるからなー」

「……それだけで動けるんだな…お前は…」



呟いた言葉は教室の騒がしさに掻き消された。と思ったのに、佐々部はちゃんと拾ってくれていた。



「それだけって、大切な奴らの為なんだから動くしかねぇだろ?」

「……っ……そう…だな…」

「なぁ窪原。 俺、本気でお前と仲良くなりてぇよ」

「……俺といても楽しくないけど」

「楽しい楽しくないを決めるのは俺だ!」

「…ふっ……変なやつ…!」



佐々部が言った言葉の意味が、俺にもいつか分かる日が来んのかな。


大切なものを大切に出来ない。


好きなものを好きだと言えない。


側にいたくても側にいたいと言えない。


そんな環境の中で育った俺にも、ちゃんと向き合って素直になれる日が来んのかなぁ…?


佐々部みたいに、心の底から笑える日が来んのかな…。


そう考えると、動かずにはいられなかった。


俺にも大切な奴がいるんだ。


大切にしたい人がいるんだ。


それをどう伝えるかなんてまだ分かんねぇけど、ちゃんと向き合いたいと思うからこそ動くしかない。


そうして俺は……後と友達になった。


そしてとうとう、凛と向き合わねぇといけない日が来たんだ――……。