嫌だ。 面倒臭い。 知るか。
どの嫌味も当てはまりそうな顔。
だけど、どこか恥ずかしそうにも見える。
なんだろう……何かと葛藤してるみたい…。
たかが名前を呼ぶくらいじゃない。
好きだって言ってほしい。そう言ってるわけじゃないんだなら、簡単でしょ?
そう思うけど、私が逆の立場だったら絶対に呼ばないと思った。
恥ずかしいけど、それだけじゃない。
私の場合は好きな人だからって理由があるからだけど…。
ねぇ、窪原くん。
「私と、友達になってよ――」
こんな事言うつもり無かったのに。
言ったって、行動しなくちゃ何も始まらないことを分かっているつもりだから。
だから、絶対口にはしないって、そう思ってたのに。
どうして今口にしちゃったんだろう……。
お願い……。 一度だけでもいいから…。
「私の名前、呼んでよ――…」
あなたに呼ばれたいの。
あなたに呼んでほしいの。
誰より大好きなあなたに、呼んでほしいの。
複雑そうな顔を見せたあと、窪原くんは私の方に歩みを進めてきた。
恥ずかしげもなく、もう一度、私の頬に触れる。
「もう、支えてやんねぇからな、凛」
「っ……!」
大好きな人の声から紡がれる自分の名前は、こんなにも愛おしいものなんだね…。


