「いや、倒れたって言うか、意識なくしてた。ほんの一瞬だけど」
「………そっ…か…。 なんか、ごめんね、色々と」
謝る私に窪原くんは、
「色々つっても、お前のことに関しては今日が初めてだろ」
と言われてしまった。
あ、って言うか、またお前って言った…。
ジトッと睨みつける私に"あ？"と睨みをきかしてくる窪原くんだけど、残念ながら怖くないから。
仁の睨みの方が数百倍は怖いから。
小さく溜め息をついたあと、私はさっきと同じようなことを口にした。
「名前……お前って言われるの嫌なんだけど……」
私の言葉も虚しく彼は「知らん」と言いながら私を起き上がらせてくれる。
「でも、倒れてないにしろ、支えてくれたんだね。ありがとう」
「……別に。支えるくらい普通だろ」
「それでも……うん、嬉しかった」
私の言葉に、大きな目をまた少し大きくさせた窪原くん。
―――なんだか今日、この表情多いな…。
驚いてるからかなぁ…。 でも、一体何に驚いてるんだろう……？
私の悩みも虚しく、彼は"別に"と言って自分の教室に戻ろうとする。
「あ、窪原くん」
最後に、私の名前、呼んでよ。
そう口にした私を見て彼はなんとも言えない顔をした。
