そう言ってしまえばきっと窪原くんは断ったりしない。 本当は優しい彼だって事を私は知ってしまっているから。


あぁ、そっか。これって窪原くんの優しさを利用しちゃってるって事なのかも。



「ごめんね」



不意に謝った私に、パッチリ二重の大きな目をいつもより少し大きくさせた。



「……何が」



いつも違う、どこか不安そうな声音。


それがなんだか可笑しくって、少し笑ってしまう。



「あっ、ごめん。でも、変な意味じゃないよ。 今思ったんだけど、私、嫌な奴だよね。だから、ごめんね」

「………どこで自分を嫌な奴って思ったわけ?」

「んー……。多分、窪原くんの優しさを利用しちゃってるなって、思ったから」



私の言葉に首を傾げる窪原くん。


うーん……なんて言えば伝わるのかな…。



「窪原くんって本当は優しいと私は思ってるから、今みたいな言い方しちゃったら断らないだろうなって。そう思ったの。 だけどそれって、つまりは、窪原くんの優しさを利用してるのと同じことでしょ?」



だから謝ったの。


そう続けた私を見て少しの間フリーズしたあと、初めて見る顔を見せてくれた。



「やっぱお前は……ふっ、馬鹿だな…」

「……っ、」



やめて……。 何言ってるの…。 私、頭おかしいんじゃないの? 馬鹿って言われたんだよ? 今、かるーくディスられたんだよ?


それなのに………なんで…。


なんで、嬉しいとか思ってるの……。


あぁ、もう。 最悪。私って、本当はすっごく馬鹿なのかもしれない…。


もしかすると、仁と後より馬鹿なのかも……。 なんて言ったらまた虫ケラ扱いされちゃうかもしれないから、絶対言わないけど。