「えっと、確かここに……。あった!」
只今教室に忘れ物を取りに来た私は、愛坂陽芽。16歳の高校二年生。
出来が良いわけではないけれど、悪くもない……と思いたい。
そして、私には双子の兄・桜司がいる。
双子な上に“ひめ”と“おうじ”という珍しい名前なため、私たちはすごく目立っているの。
目立つの、好きじゃないんだけどね!

桜司はいつも私と一緒にいる。
あ、もちろんだけど、桜司がシスコンだからじゃないよ!
ちゃんとした理由もある。
それは、正しいこと。
だけどね、私は……桜司に、自由に羽ばたいてもらいたい。
私のことなんか忘れて、色んなことをしていっぱい笑ってほしい。
でも、それをさせてあげられていないのは、私がいるから。
ぽたり、とせっかく取り出したノートに、何かが落ちた。
ごめんね、桜司。
私なんかがいて、ごめんね……。

その時。
ガラッとドアが開いて、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「陽芽っ!」
後ろからの声にくるりと振り返ると、いつもの心配顔が見えた。
「……桜司」
本当に、いつでも私のところに来るよね。
「良かった。何かあったんじゃないかと……」
「大丈夫、なにもない」
その時、桜司は私の涙に気づいたのかな。
はっと息を呑んで、
「陽芽……まだ気にしてるのか?」
そう聞く桜司に、私はぶんぶんと高速で首を横に振る。
「そうじゃないよ。でもね……」
__君に負担をかけていることが、
「なんか、悲しくなっちゃって……」
__君の重荷になっている自分のことが、
「ほら、もう今日も終わっちゃうじゃない」
__嫌いで嫌いで、仕方がないの。
桜司はにかり、と笑ってこう言った。
「陽芽は考えすぎ。もっともっとポジティブにならないとな!」
「ん、そうだね」
桜司は簡単そうにいうけどね、私にはそれが一番難しいのよ。
どうしても、ネガティヴ思考になってしまう。
だって。







__私の余命は、後一年なんだもの。