「小宮課長、絶対になずなを弄んでるよ。

なずなをその気にさせるように仕向けて、やるだけのことは全部やって、終わったらポイッて捨てる魂胆なんだよ」

佐和子はバンッとテーブルをたたいた。

そのせいでお冷やが揺れたのと同時に、音に驚いた周りの人たちが何事かと言うようにわたしたちに視線を向けてきた。

「さ、佐和子、落ち着けよ…な?」

三平はどうどうと佐和子をなだめようとした。

「私はいつだって落ち着いていますけど?」

ジロリと、佐和子が三平をにらんだ。

その視線にひるんだと言うように、三平は押し黙った。

「なずな」

佐和子は視線をわたしの方に向けると、わたしの名前を呼んだ。

「小宮課長と今すぐに別れろ、なずなのためを思って言ってるんだ。

心身共に無事なうちに早く手を切れ」

「えっ、ああ…」

わたしをにらみつけているその瞳が怖くて、わたしはコクコクと人形みたいに首を縦に振ってうなずいた。