それから、表紙のカバーや帯に書き込むキャッチコピーを、今までとは真逆に近いくらいにガラリと変えた。
本屋に営業をかけ、これは売れるからと一番目立つ場所に置かせてもらった。
『水城!藤田先生の小説、増刷がかかったぞ!』
俺が少しの間デスクを離れ、編集部に戻って来た時、先輩からそう伝えられた。
『……増刷……ですか?』
俺はあまりに衝撃的でうまく理解する事が出来なかった。
『そうだ、増刷だ。藤田先生の小説が売れてるんだよ!これはヒットものだぞ!』
売れている。
その言葉を聞いて、涙が頬を伝った。
『早く藤田先生に連絡してやれ』
『……はい』
ただただ嬉しかった。
藤田先生の小説がたくさんの人に読まれている。
その事が本当に嬉しかった。