妙に聞き慣れた声はやっぱり水城さんで。
どこからどう見ても水城さんで。
水城さんがいらっしゃいました。
「…お、お疲れ様です。偶然ですね、こんな所で。水城さんもお買い物ですか…?」
『……………』
「……………」
何ですか?この微妙な間は。
凄く怖いのですが。
『…お前が俺に対する見方がどういうものか、よく分かった。明日から、覚悟しておけ』
「うっ、えっ、あ、あの!……」
水城さんは、氷点下0℃級の視線をお見舞いし踵を返し不機嫌オーラを身に纏い去って行ってしまった。
弁解の余地なし。
地獄ゲートの扉をすんなり開けてしまった。
要するに、大ピンチなのである。
もう、最悪だ。
なんで、あの人ここに来たの?
それに、何も買わなくてよかったの?
何しに来たのさ!
これを教訓に、プライベートで仕事関係者の事は、独り言でも言わないと心に決めた。
『川本!!!』
「はいっ!すみません!!先に謝っておきます!何ですか?」