花巻町ことぶきハイツ。
木造2階建て。所々腐りかけの階段をかけ上がる。
近隣住民の皆様、誠に申し訳ありません。
ご迷惑をおかけいたします。
「先生!久留米先生!川本です!担当編集の川本です!開けて下さい!」
本気で叩けば壊れるんじゃないの?と思うくらいのガタガタになっているドアをこれでもかと叩く。
壊れない所を見ると、以外と頑丈だな。このドア。
「先生!いるんでしょ?今日締め切りなんです!出来てますよね!原稿下さい!すぐに下さい!お願いします!先生」
『………うるさい』
叩いて駄目なら蹴破ろうと思った矢先、古びた音を響かせ隙間から先生が顔を出した。
「久留米先生!原稿を!」
どうやら、ドアチェーンまでは開けてくれないらしい先生はその隙間から茶色の紙袋に入れられた原稿を差し出してきた。