開け放たれたままのドアなのに、すんなり入れないのは何故だろう。


それは、あたしがチキン野郎だからです。


トイレから戻ってきた高橋さんと共に営業部の前まで来たはいいが、なかなか一歩を踏み出せないでいた。



営業部内の空気がよどんで見える。
これが鬼から放たれる邪気なのだろうか。
とにかく怖い。


だけど、隣ではオロオロしている高橋さんがいる。

しっかりしろ、ゆとり代表。
あの、石頭のおっさんにガツンと言ってやるってさっき心に誓ったじゃないか。



開けっ放しのドアだが、一応コンコンと軽く叩いたつもりだったが思いの外、力が入っていたらしくドンドンとあまりに主張はだはだしくなってしまった。



「……失礼します。川本です。少しよろしいですか?」



おっかなびっくり。
突入有るのみ。高橋さんを引き連れて打ち合わせ中であろうお二人さんの元に進む。