干物ハニーと冷酷ダーリン


水城さんに、激励だか勇気だかをもらいあたしは再びチャラ男が待ち受けているであろう鬼門へと近付く。


案の定、そこにはナンパ野郎がいるわけで。





『川本さん!』




やっぱり思い上がりじゃなく、声をかけられる羽目になった。



「……相崎さん。どうしたんですか、こんな所に?」


『川本さんを待ってました。昨日の今日なのでどうかと思ったんですけど』


ああ、本人もその自覚があったんだ。

この人、一々丁寧なくせに行動が極端すぎる。
見た目のまま爽やかボーイだったら、あたしの中ではいい人だったのに。




「あたしにどのような用事でしょう?」


『そんなに警戒しないで下さいよ。川本さん、今日はもう上がりですか?』


「…えぇ、まぁ」


『なら、食事でもどうですか?』


「お断りします」


そうそう。ナンパのオプションかと聞きたくなるようなこの誘い文句。


やれ、お茶しない?だの俺達と遊ばない?だの自分達はどんな気持ちで言ってんの?
恥ずかしくないの?誘えると思ってんの?そんなに自分に自信持ってんの?


って言いたくなる気持ちを抑えつけながら、きっぱりとお断りする。


『このあと、予定がありましたか?』



「いえ、何もありません」


あからさまに貴方と一緒に食事をするのが嫌なんですと分かりやすく伝えたつもりだった。



『ああ、気分じゃない日ってありますよね。なら、別の日にどうですか?』


なのに、この男。
鈍感なのか、マイペースなのか、はたまたとぼけているのか全く通じていない。
これがナンパの醍醐味でもあるのか、しつこい。非常にしつこい。