『それにしても、昨日の今日で待ち伏せかよ。川本、何かやらかしたのか?』
「な!何もしてないですよ!」
『なら、堂々としてればいい。相手の気持ちがどうあれ、決定権を持ってるのはお前だ。何をそんなに構える必要がある?』
「まぁ、そうですねぇ。そうですよねぇ」
改めて考えてみれば、水城さんの言う通りあたしが怯える事もない。
相崎の突拍子のない行動力のせいで、頭がパニクっていた。
落ち着けよ、あたし。
あっちが何を言っても、突っぱねればいい。
ただ、それだけなんだから大丈夫。
簡単な事じゃないか。
なにも、そんなに思い詰める事もない。
『何かあったら、黒崎でも俺でも力になってやる。ドンとかましてこいよ。ナンパの一人や二人』
「いや、あの…こんな事は1人でもう充分ですよ。これから先にも多分もう現れないと思いますし……」
『…あっそう。まぁ、そう物好きもいないか』
いつからだろう。
水城さんはあたしを珍獣か何かと思っている節がある。
珍獣ならまだしも、時々未確認生命体と遭遇したと言いたげに眉間を寄せる事もある。
あたしという存在が危うい。
もはや、こっちの方が由々しき事態であるとナンパチャラ男から学んだ気がしなくもなくもない。
