「あのですね、居たんですよ」
『………誰が』
落ち着いて、尚且つ簡潔にと思い考えた結果、いろんな言葉を省略し過ぎて尚更伝わらなかった。
「昨日、話したじゃないですか。あのチャラ男副店長です」
『なんだと?うちの出版社に用事か?』
「いや、それなら、入ってくるはずですよ。なのに花壇に腰かけてるんです。チャラ男のくせにナンパもしてない様子だったのでもしかしてと…………」
『…なるほどな』
えっ、なにそこで納得しちゃってるんですか?
なるほどな。って何?
「……あたし自意識過剰でした?」
『いや、9割方お前を待ってんだろうな』
「何でですか!普通、職場まで来ます?暇なんですか、あの人!」
『まぁ、ここまで来るって事は暇なんだろうなぁ。羨ましいよな』
「……はい」
って、違う。なんか違うぞ。
暇で羨ましいのは確かだけど、問題はそこじゃない。
なんだろう………水城さん、論点がずれる程疲れてんのかなぁ。
水城さんにしては、珍しいケアレスミスだ。
「あのー、水城さん大丈夫ですか?」
『あ?それは、お前だろ』
「あ、はい」
えぇー!普通に戻ってる。
明らかにさっきは、頭大丈夫?って感じだったのに、復活なさってる。
それならそうと言ってもらわないと、こっちが困るよ。
せっかく心配したのに、逆に頭大丈夫?みたいな顔されたじゃないか。
