『みーたーぞー。川本、まさかのモテ期到来』
「げっ。黒崎さん………」
空腹を主張し続けているこの腹に、食糧を詰め込んでやろうと、控え室に戻ってみたら消えたはずの黒崎さんがなに食わぬ顔で鎮座していた。
『なになに?いつの間にそんなトキメキな関係になってたの?』
まるで女子高生並みの恋ばなしよう!的なノリが腹立たしい。
高校生でもなければ、女子でもない成人男性のくせに。
「見てたなら分かるじゃないですか。どこにトキメキ要素がありました?無いですよ、全くの皆無です」
自分の昼食にと用意したコッペパンを頬張る。
っというか、白田先生は何処に行ったのだろうか。
お弁当は綺麗に片付けられていて、ただ飲み物だけが、そこにある。
『えー、でもあの副店長、イケメンだし優しそうだし、何より川本と年近いじゃん?確か、、、30?』
「だから、何ですか?」
『いっちゃいなよ!』
「……どこに?」
『恋愛に!』
あー、はぁー、んー、
このオッサ………いや、この黒崎さん……いや、このオッサン殴りたい。
なに笑顔なんて作っちゃってんの?
なにウインクなんてしちゃってんの?
なに指を立ててバッキューンなんてやっちゃってんの?
「………白田先生は、何処に行ったんですか?そして黒崎さんは何で戻ってきたんですか?ついでにアホか?アホなんですか?」
『えっちょ、まっ、、、当りキツくない?ごめん、ごめんなさい。お願いだからそれ以上コッペパンを握り潰さないで!』
右手に持っていたコッペパンは、パンのふっくら感がなくなり、握り絞めてしまった所から真っ二つに分断されそうになっていた。
ごめんなさい。コッペパン。
コッペパンに罪はなかったのに。
でも、大丈夫。ちゃんと美味しく頂くから。
はみ出したジャムまで舐めきってみせるから。
