このフェアの開催にあたり、追加事項が増えた為、営業部に内線し電話の向こうで『大平さん、2代目からの内線です』と聞こえたのは幻聴ではなかった。


保留にしてなかった為に『げっ、マジ?今出てるって言っといて!』とはっきり聞こえたもんだから瞬時に営業部に乗り込んだのは記憶にあたらしい。




「営業部は、大層な遊びが流行ってるんですね?そんなにお暇なら、ガンガン営業かけたらどうですか?」


『暇そうに見えるか?』


「少なくとも、あたしの目には」


『心外だな。どこぞの編集部のおかげでうちは日々大荒れ状態だ』


「ああ、そうなんですか。スキルアップされたらいいと思いますよ」



ビシビシ!バチバチ!

お互い大衆の面前なので、顔には出してはいないがそれでも小声ながらも攻防戦を繰り広げていると、書店スタッフから開店まであと30分ですと声がかかった。




「では、大平さん。今日は宜しくお願いしますね」


『おー。よろしく』




あたしは、作業するのに邪魔で外していたスタッフパスを首から下げると、バックヤードにある控え室に向かった。



『おー、川本。外はどんな?』


「ほとんど完了してます。あと30分後に開店です」



パソコンと向き合っている黒崎さんに伝えると、テーブルに置いてある数取器を手に取る。