6月某日。

普段とは一変して、サマースーツに身を包みあたしはある書店にいた。


書店の前には、テントが設置され垂れ幕にはデカデカと【新星☆注目マンガ作家 白田雪乃フェア第一段!】と書かれている。


店内には所狭しと白田先生の作品が並べられ、刻々と準備が進められていた。


営業部もやれば出来るじゃないか。

店の顔とも言える入り口一帯に儲けられた特設スペースを陣取り、売り文句のポップもキャラクターを使い大いに宣伝されている。



『見たか、営業の力』 


「大平さん。お疲れ様です。あたしは始めから期待してましたけどね」


『よく言うよ。あんだけ追い込み掛けてきたくせに』


「そうでした?営業が力を出し惜しみするからじゃないですか?」


『おー、こわっ。さすが水城編集長の影武者』


「なんですか、それ」


『営業部では、そう言われてるよ川本。他には2代目とか、使い魔とか』



2代目とは、単純に水城さんが乗り移ったかのように見えてしまったため、水城さん2代目から由来されている。

使い魔は、無理難題を押し付けてくる編集部改め地獄から上がってくる企画書を運んでくる事から命名されたのだ。