『…38度だな』
「げっ…あの、今何時ですか?朝までに下がりますかね?」
『0時を過ぎたばかりだ。熱も急には下がらないだろ』
悠長にゼリーなど食べてる場合ではなかった。
思いの外、熱があったのにはびっくりだ。
「気合いで下げます。あたしなら出来る気がします」
『…アホか。気合いでどうにかなるわけないだろ』
「なら、どうするんですか!営業部は待ってくれないんですよ!」
あたしの敵は、熱より風邪より営業部だ。
あの石頭を捩じ伏せなければ。
きっとあの企画も営業部長の長谷川さんに難癖つけられて突き返されたに違いない。
『昼までだ。昼まで俺が食い下がってやる。川本は熱があろうが無かろうが、午後から出社してこい』
「……分かりました」
『なら、さっさとそれ食って薬飲んで寝ろ』
「…はい。あっ、水城さん、あたしの鞄の中に企画関連の資料入ってます。妥協出来る範囲も載ってるので、お願いします」
『分かった。持って帰る。俺が出たら鍵掛けろよ』
床に転がっていた鞄からちょうどはみ出ていた資料を抜き取って水城さんは、帰っていった。
営業部の事で頭がいっぱいで、水城さんにお礼をいうのを忘れてしまった。
また、明日ちゃんと言おう。
今は、これを食べて薬のんで寝てしまおう。
水城さんに任せておけば、最悪な事態にはならないだろうし。
今度こそ、しっかりと鍵を掛けた事を確認して眠りに落ちた。