誰かに起こされ、目を開けたらそこには水城さんがいた。
「……………、何してるんですか?」
『…あ?』
「やっ、違います。ちょっと寝ぼけてました。すみません、しっかり覚えてます」
今にも、1人あの世逝きにでもしそうな水城さんの顔は凶器そのものだった。
『…計ってみろ』
「あっ、見つかったんですね。どこにありました?」
水城さんから体温計を受け取って脇に挟む。
『それはペン立て。こっちはキッチン』
「………いろいろとすみませんでした」
よくぞあの部屋から探し出せたものですね。さすが、敏腕編集長様です。
『飯は、食ったのか?』
「いえ、まだ……」
『これ食って、薬飲んで寝てろ。…体温計』
ピピッと計り終えた体温計が音を立てる。
それを水城さんに渡すと、眉を潜めた。
「そんなに、高かったですか?」
ゼリーの蓋をビリビリと剥がしながら聞く。
あ、美味しそうな匂い。
スプーンで掬って口に運ぶ。
甘くておいしい。
風邪を引いているわりに、食欲はあるあたし。
あたしのお腹は素直なのである。