入った喫茶店でも、高野さんは女の子たちの視線を独り占めしていた。


これでも、女の子だもんなぁ。



でも、女とわかれば、例えどんなに男らしい風貌だろうと

恐くはない。


「あの…高野さん」

「一樹でいいよ。アタシも桃佳ちゃんって呼んでるし」

「あ…はい。じゃあ一樹ちゃん。あの、教えてほしいの。
…ロウ……とか言う生徒のこと」


わたしは俯きがちに言った。


一樹はコーヒーを飲みながら、頷いた。


「あの子…上月狼(コウヅキロウ)はね、アタシの幼なじみなんだけど…。
初めて付き合ってた女が、ヒドイ女でね」


一樹は深くため息を吐いて、しみじみと語った。


わたしは、注文した紅茶に手を付けず

ただ頷いていた。


「…それが虎馬になったのか、それ以来あの子は、女の子をまともに扱わなくなった。
狼にしたら、女は玩具なのよね」


喉がはり付くように乾いてきた。


潤い欲しているわけじゃない。



緊張…恐怖…

……記憶の…蘇生…。



全てが


わたしを侵食していった。