お気に入りの歌を口ずさみながら、坂を下る。 沈みかけの太陽が、最後の力を振り絞って、町をきれいなオレンジに染めていた。 坂のてっぺんからは、町が一望できる。 そこからは、予備校も見えた。 小さな灰色のビル。 大きくとられた窓には“春季講座受講生募集!”と、ひとつの窓に一文字ずつ紙が貼られていた。 予備校が近づくにつれ、私の胸の鼓動も早くなる。 もうすぐ、先生に会える。