建物の中へ勢いよく飛び込み、先生の名前を呼ぼうとした、その時。
目に飛び込んできたのは、たくさんの女子生徒に囲まれ、楽しそうに話す、先生の姿。
「せんせ……」
先生は、みんなの先生。
私だけのものじゃない。
みんなに平等で、特別扱いなんかしない。
そこが沖田先生の人気の要素なんだ。
だからこそ、好き。
でもね、本当は特別扱いして欲しいんだ。
私だけに笑いかけて欲しい。
こんな気持ちを教えてくれたのも、先生だよ。
今にも泣き出そうな、空模様。
そして、私。
私は、その場を後にして、静かに階段を上った。
窓に目をやると、雨は更に強くなっていた。
雨に濡れた桜の花が、悲しそうに散っていた。

