「あ」
私とバッチリ目があって、慌てて明後日の方を向く彼。
付き合って3年目。
気づけば私たちももう大学2年生だ。
同じ大学に入学できたときは、死ぬほど嬉しかったっけ。
荷物の片付けにもたついている私のところに、かれがつかつかと歩み寄ってくる。
かっこいいよねー!何て声が聞こえてくるから、普通なら彼をとられてしまうのではないかと不安になるのだろうが、私の場合、その不安は一生存在しない。
だって、彼のとなりにいれるのは、私だけだとわかっているから。
なぜなら……
「おまえ遅い」
「ご、ごめんね。お昼遅くなっちゃうね」
慌てるともっと遅くなるのを知っていながら、彼はそう言うことを私に言う。
でもそのあと腕を組んで、またそっぽを向いて。
顔を真っ赤にしながら言うんだ。
「べ、べつに、早くお前とお昼食べに行きたいだなんて、思ってないからな」
キューーーーン!
ま、まさかの!
そう、その通り。彼は根っからのツンデレなんだ。
「お待たせ!」
急いで教科書のたくさんはいった荷物を持ち上げ立ち上がる。
すると彼が荷物を取り上げ、私に手を出してきた。
「ふふ」
クスリと笑って、私はその手をつかむ。
彼はまた真っ赤になりながら、笑った私の顔をにらんだ。
「お前のためとかじゃないからな。ただ、重そうだったから……」
「わかってる。ちゃんとわかってるよ。ありがとう」
「ん」
彼は嬉しそうに微笑んだ。
そんな彼の顔も、恥ずかしくてツンデレになっちゃうとこも、真っ赤になる顔も、私は全部大好きなんだ。


でも時々、不安になる。



「ねーねー」
「あ?」
「あなた彼女いるでしょー?冴えない感じのさ!」
なんというタイミング。
彼のところに向かおうとした通路。
彼がめに入り声をかけようとする直前、ある女の子が彼に話しかけた。
あー。思わず曲がり角に隠れちゃった。
「いるけど?」
うわ、彼すごい不機嫌!
ツンデレの彼がツンデレじゃないときは、恐ろしく不機嫌なときなんだ。
授業でなんかあったのかなぁ?
「でも、好きじゃないんでしょ?」
「は?」
え?
「だって、いっつもみんなに、かわいくないとか、好きじゃないとかって言ってるジャン?そんなに嫌なら別れちゃえばいいのにって~」
その女の子は、女子大生ってかんじで、女の子ってかんじで、可愛い。
私はうつむいてしまう。
そんな風に言われてたのかぁ。知らなかったな。
「だからさー、彼女やめて、うちにしたら?」
!!
も、もしかして、彼今告白されてるの?!
た、立ち聞き何てしなきゃよかった……。
彼は、何て答えるんだろう。
「はぁ」
「ね?だか……」
「うるさい」
「へ?」
「あと、俺は可愛くないとも好きじゃないともいってない」
「は?だっていっつも!」
チッ
という、盛大な舌打ちが聞こえた。
「彼女を周りのやつらにとられないために決まってんだろ?本気にすんなよ。気持ちは嬉しいけど、俺あいつ以外考えられないから」
「……」
つかつかといつものようにあるって来る彼。
角を曲がる直前で、足音が止まった。
ひょいっと顔をだし、こっちをみる彼。
さっきの怒っていた顔とは真逆の、珍しく満面の笑みを私に向けた。
「立ち聞きしていいこたあった?」
「き、きづいてたの?!」
彼はいつもの手つきで私からバックを取り上げ、手を繋いだ。
もちろん、彼に告白していた彼女の前を通るときも、堂々と恋人繋ぎで。
「……悪い」
「へ?」
照れくさそうに頭をかきながら、苦笑いを私に向けた。
「俺、何でか本心と真逆なこといっちゃうから、おまえのこといつも傷つけてんじゃねーかなって思ってよ……」
私はキョトンとして、固まってしまった。
そんなの、そんなの。
言われなくたって、わかってるよ?
さっきの告白も、あなたが私を裏切るわけ無いって、なんだか自信があったんだ。
ツンデレの君には、私がいなきゃダメなんだって。
「……な、なんかいえよ」
「好き」
「はぁ!////////」
あーあ、やっぱり真っ赤だ。
「荷物持ってくれたり、手を繋いでくれたり、迎えに来てくれたり。のろまな私を待っててくれたり、デートしてくれたり、好きっていってくれたり、風邪引いたときは看病してくれたり……」
もっともっと、言い切れないほど。
多くのことを、私はあなたからもらっているの。
「あなたはツンデレさんだって、私知ってる。それでも好きなの。だから、謝んないで?」
彼の目が一瞬潤んだ。
そっぽ向いて、繋いでない方の手で私の頭を撫でる。
「別に、泣いてなんか無いんだからな!」
「はいはい、わかってます」
「……これからはその、ツンデレ?とやらをなおすから」
「いいよ直さなくて。あなたの個性だもん」
潤んだ瞳を私の方に向けながら、彼は真っ赤な顔をして笑う。
「俺の敗けだ」
「なによーまけって」
「おまえには一生勝てない」
「だからー、なんの話?」
「こっちの話」
「ええ」
他愛もない会話をして、今日も私たちの家に帰る。

彼の告白してた彼女。
1つだけ教えてあげる。
彼は、好きと大好きと愛してるだけは、ツンデレじゃなくて、まっすぐ伝えてくれるの。
好きじゃないなんて、言われたこと無いのよ?
彼、人前じゃお酒飲まないでしょ?
私の前だとお酒飲むのよ?
彼、お酒飲むとツンがなくなってただのでれになっちゃうから。
つまり、あなたは、私にかなわないんだから!!



『ツンデレの君』