昔はただ、仲のいい男の子の友達だった。
あなたとであったのは、小1の春。
そこからは、中学を卒業するまで一緒。
同じ高校にいくと思ってたら、もっと上の、ここから少し遠い学校に行ってしまった。全寮制で、なかなか会えなくなってしまったんだ。
離れてから、あー、好きだったのかもしれないと、思うようになった。
そんな、高1の夏。
「へ?」
「だーかーら、盆踊り」
「なに?小学校の?」
「そー。ほら、先生にあいにさ、いこうぜ!」
「えー、ちょっとまって?」
携帯電話を片手にカレンダーの前へと移動する。
えーっと、7月の……
あ、予定入ってない。
「じゃーいこっか」
「おっし!じゃあ他の子も誘うねー!」
「うん、よろしく」
そのときは、あなたに会うなんて思っても見なかった。

「先生!」
「おー、お前ら元気そうだな」
その近くにたっていたのは、彼。
背が伸びて、顔つきも変わって、すごく……すごく男前になってる。
何でわたし、戸惑ってるんだろう?
「久しぶり、元気だった?」
「おー、久しぶり!元気元気!そっちは?」
「元気だったよー。今帰ってきてるの?」
「そう。夏休みの間はこっちにいる」
「そっかー」
よかった。
……よかった?なぜ?
私はあなたの、恋人でも何でもないのに……。
「か、彼女できた?」
「できるわけねーって!男子ばっかりだぞ!」
あ、そうだった。
工業系っていってたっけ。
昔は私の方が、頭よかったのになぁ。
すっかり抜かされちゃったし。
「……そっちは?」
「えっ!いないいない!いるわけないよー」
そのまま彼を含め友達と回って、もう帰る時間になった。
LINE、聞きたいな。
でも、恥ずかしくて、なかなか言い出せなくて。
でも言わなかったら、また、会えなくなる。
自然に、自然に!
「ねー」
「ん?」
「LINE交換しよ?」
彼は一瞬固まってから、優しくスマホを取り出した。
「あぁ、いいよ」


それから一ヶ月。
もう夏休みも開ける。
多分彼も、あっちに戻ってしまったことだろう。
連絡はとっていない。
何を話していいか解らないし、勉強で忙しい彼の時間を、彼女でもなんでもないわたしが、使わせていいわけがないのだから。
でも、一回だけ。
年に一度だけなら、いいよね?

私は、思いきって、その文面を送る。

「お誕生日おめでとう」

きっと返事は、帰ってこないだろうけど。


『年に一度』