愛しい人


そう言って走って行ってしまった。
結局、お礼も言えなくて。

「名前だけでも聞きたかったな…」

彼がいなくなった時には涙なんてもう流れてなくて、
頭の中は彼の中でいっぱいだった。

たった一回あっただけ

初めて話したのに

名前も知らないのに

私はその彼のことをいまでも忘れられずにいた。