君は、本当はヒラヒラした華美なドレスも、美しい装飾がほどこされた城も、仕える召使やメイドたちもいらなかった。 だって、外の世界に出て色んな新しいものを見るのが夢だったから。 「ねえ、わたし、世界中を旅してみたいの」 君は、口癖のようにそう言ったね。 僕は困ったけれど。 「いつか、行こう」 そう言うと、君は笑ってくれなかった。 僕も君も分かっていたからだ。それは、叶わぬ夢だと。