「な、何か手伝うよ・・・・・・」
「大丈夫。あ! それなら、お茶出してくれる?」
「うん、わかった」

 冷蔵庫から麦茶を取り出して、彼のグラスに注いだ。
 手についた泡を水で洗い落としてタオルで手を拭き、お茶を飲んだ。

「明日、仕事が終わったらどっか行くんだよな?」
「うん、久々に外食しようかなと思って」
「明日は仕事休みだし、明るい間に俺もどっかへ行こうかな」

 兼吾は明日の夜、友達と会う約束をしている。

「そういえば時計は? 前に買いに行くことを言っていたよね?」

 前まで持っていた腕時計を落として完全に壊れたことを兼吾は嘆いていた。

「まだ買っていないな。せっかくだから良いのがないか店に行こうかな・・・・・・」
「そうしなよ」

 ご飯を食べたので休んでいると数分後、兼吾に風呂に入るように言われた。
 しかし友達との約束があるので、今日は泊まらず、家に帰ることにした。
 家まで送るといわれたものの、時間が遅いのでやんわりと断ると、駅まで送ると送ってもらった。

「送ってくれてありがとう。兼吾」
「気をつけてな。芽来」

 手を振ってから鞄のポケットの中にある定期券を取り出し、それを入れて通った。
 電車に乗ると、前の席に座っている人がスマートフォンを操作しているところを見た。
 ここでふと、未だにスマートフォンをしまったままであることに気づき、それを引っ張り出す。
 操作していると、以前恋人としてつきあっていた彼、星汰(せいた)からLINEが送られてきていた。
 また会いたい、話がしたいと別れてしばらく経ってから何度もLINEを送ったり、電話をかけてくる。
 そのことを兼吾に相談することを考えたものの、なかなか相談できずにいる。