「はる…と?」


同時に感じる全身の温もり。いつもよりきつく、ぎゅっと抱きしめられている。


「…欲しいに決まってるじゃん」


「ん?」


「欲しいよ子供。でも、藍は就職したばかりで色々と大変かと思って。落ち着くタイミング見計らってたんだ」


初めて聞く春人の気持ち。私のことを思ってくれていたんだ。


春人への愛おしさが増し、私もきつく抱きしめ返した。


「まだ式も挙げてないし、子供はそんなにすぐ焦って作るものでもない。だから今は藍と二人でいれる時間を幸せに過ごしたいんだ」


「春人…」


「それとも藍は今すぐ欲しい?それならそれでもいいけど」


体を離し見上げた春人の顔は付き合いだしてからよく見るようになった意地悪な表情をしていた。


「な!別にそういうわけじゃ!」


「あははっ。からかっただけだよ」


「もう!」


春人の胸を叩き、再び顔を埋めて抱きしめた。春人は私を包み込み優しく頭を撫でる。



「なぁ藍、夕飯もう少し先でいいからさ。今は俺に時間ちょうだい」


遠回しに言っているけど、その言葉の意味はわかった。笑顔でゆっくり頷き、私たちは吸い込まれるように寝室に移動した…