家に帰るのはだいたい私が先。夕飯の準備をし、食事は一緒にとるから春人が帰ってくるまでのんびりテレビを見るのが習慣となっている。


適当にチャンネルを変えていると、玄関から足音が聞こえてきた。


「ただいま、藍」


「お帰りなさい!夕飯の準備するね!」


ソファから立ち上がると、テレビから流れるよく聞く女性コメンテーターの声に足が止まる。



『近年、できちゃった婚が増えていますが、夫婦になっても子供を作りたがらない男女も増えているそうですよ』


無意識にテレビに顔を向けていた。まさに今日、春人に聞こうと思っていたことがテレビの向こうのコメンテーターによって発せられた。



恐る恐る春人の方に目をやると、ネクタイを外しながらその特集に真剣な顔で見入っているようだった。


恥ずかしくなりテレビのリモコンを取って電源を落とす。




「どうした?」


キョトンとした顔に必死に言い訳を考えるが、こんな状況で的確な返しをできるほど賢くない私。こうなったら言ってしまえと勢いに任せた。


「あ、あのさ。春人はさ、子供欲しいとか、思う?」


「え…?」



目配せしながら反応を伺う。私がそんなことを聞くなんて思ってもいなかっただろう。



「もしさ、欲しいと思ってくれてるならは、私はいつでも…大丈夫だからね」


夕飯の準備をすると言っておきながらなんてことを言ってるのだろう。たまに大胆になれる自分が恐ろしい。


そんなことを思っていると、急に視界が真っ暗になった。