10年愛してくれた君へ【続編】※おまけ更新中

「いつ…戻ってこれるの?」


「わからない。少なくとも1年は向こうにいると思うよ」


1年…そんなに長く離れて過ごさないといけないの?


春兄はどうしてそんなに冷静なの?


寂しいのは、私だけなの?





「…嫌だ」


「藍?」


「私、絶対嫌だ!」


立ち上がり、レストランから走り出す。春兄が私を呼ぶ声など耳に入らない。


あぁ、私なんてことをしてしまったのだろう。


何が"春兄に相応しい大人の女性になる"よ。こんなんじゃどんどん後退していくばかりじゃん。



春兄…ごめんね、こんな私でごめんね。







鳴り止まない春兄からの着信に出ることができなかった。メッセージも次々と入るが、開く勇気がない。


さっきのことで嫌われちゃったかもしれない。愛想尽かされたかもしれない。春兄に合わせる顔がない。





やっと止んだスマホを手に取り電話を掛けた。



ープルルップルルッ



『もしも〜し、藍?どした?』


「充希久しぶり。あのさ-----…」



充希に一部始終を話した。話に割り込むでもなくただただ黙って聞いてくれた。だんだん感情的になり涙が溢れ、声が上ずる。話し終えたところで充希はゆっくりと口を開いた。



『まぁ、突然のことで受け入れられないのはわかるけどさ、今ちょっと我慢するだけじゃん?別に二人が別れるわけじゃないんだし』


「そうかもしれないけどさ」


『それに、あんたに10年も片思いしていた春人さんの気持ちと比べてみ?両思いになった二人がたった数年離れ離れになるだけよ。お願いだから重たい女にはならないでね?』


充希の棘がある言葉が刺さる。だけど、私たちのために言ってくれているとひしひし伝わる。


そうだ、壁を超えてこそ恋人だ。春兄は覚悟を決めているというのに私がうじうじしていたら、せっかくの春兄のチャンスが台無しになってしまう。しっかり受け入れないと。