「藍、誕生日おめでとう」
今日は私の19回目の誕生日。運がいいことに、今年の誕生日は日曜で春兄も仕事がお休みだった。
行き先も告げられず春兄の車に揺られて数十分、到着したのは30建のビルの最上階にある高級レストラン。
食べたことのないような豪勢な料理、大好きな春兄。幸せで胸がいっぱいだ。
「これ、誕生日プレゼント」
そう言って差し出したのは可愛くラッピングされた正方形の小さな箱だった。
そのサイズと形に、もしかして…と高鳴る鼓動。
「ありがとう春兄」
「開けてみて」
ラッピングを丁寧に外していく。露わになったそれに心臓が止まりそうになった。
「春兄、これ…」
目線を春兄に移すと、彼はふっと優しく笑ってそれを私の右手の薬指にはめた。
「ペアなんだ」
そう言って自分の右手を差し出した。春兄の右手の薬指でキラリと輝きを放っている。
私の物と全く同じそれが。
「ペアリング…」
聞こえないくらいの小さな声が口から漏れる。ずっとずっと憧れだったペアリング。女の子ならほとんどそうだろう。
今、私の薬指に存在している、その事実にふわふわした気持ちになる。
「春兄…ありがとう。凄く嬉しいよ」
笑みを浮かべる私に目を丸くする春兄。何か変なこと言ったかな…と考えていると、春兄はいつもの笑顔を見せた。
「びっくりだな」
「え、何が??」
「藍、凄く綺麗に笑うようになった。大人っぽいから、びっくりしたよ」
予想外のことを言われ驚く反面、普段の自分の笑い方がどのようなものだったのか不安が押し寄せる。
「あ、いつものくしゃっと笑う太陽みたいな笑顔も大好きなんだけどな」
あ、そういうことか。いつも私の笑顔を褒めてくれる春兄だけど、私は春兄のふわっと笑う顔が大好きだ。
「私も春兄の笑顔大好きだもん」
「俺の方が大好きだけど」
この場に充希がいたら、『バカップルだ〜』とか冷やかされるんだろうな。