でも私にはそんなすぐには…と思ったが、いずれはそういうこともするようになってくるのかな。


『ま、あんまり我慢させるんじゃないわよ?ただでさえ10年も片思いして来たんだから』


『う…うん?』


早くこの話を終わらせようと、無理やり黒山の結婚相手の女性像を推測する話に持っていった。

実際に友達とそういう話をすると、何だか生々しく聞こえてしまって耐えられない。こうなったら一人で解決するしかない!と、現在に至るのだ。



-----…



ホテルとか、お互いの家でとか、場所も事細かに書いてある。


もちろんホテルなんて行ったことないし、私も春兄もまだ実家暮らし。実家ではさすがに…とは思うが、ホテルに行くのも恥ずかしい。


…あれ?私ってばその気満々じゃん。いやいや、決してそんなわけでは…"もしも"のため!そう、"もしも"のためだ!



よからぬ妄想が頭に広がろうとしている中、突然携帯が鳴った。


ビクッと反応すると、画面に表示された名前を見て更に動悸が激しくなった。



「は、春兄!?」


よりによってこのタイミングで…!?


上手く話せるかな…



やや緊張気味に通話ボタンを押す。


「も、もしもーし…?」


『藍?電話久し振りだな』


「そ、そうだね!メッセージでやりとりするくらいだったもんね!!」


不自然に声が上擦る。春兄は私の様子のおかしさに気づいたのか、しばらくの沈黙の後口を開いた。


『何かあった?』


「えっ、なんで?」


『いや、なんか緊張しているみたいで』


春兄にはバレている…隠し通すのは難しそうだ。でも、こんなこと絶対に春兄には話せない。


恋人がするあれやこれやについて考えすぎていますだなんて、絶対に言えるわけがない!


「そう…かな?あ、あれだよ!春兄との久々の電話で緊張してるんだ!」


そう言うと、電話の向こうから春兄の笑い声が聞こえ、少しホッとした。


『あははっ。俺にも緊張するって、大丈夫かよ』


「ん?うん!大丈夫大丈夫!春兄に限らず電話すること自体が久々だったから、それで緊張しちゃったんだ!」


実際、緊張癖は少し持っているし、多分春兄もそれをわかっているから信じてくれるだろう。