「…バイト先でのことだから、俺がどうこう言えるような立場じゃないんだけどさ」


お茶の入ったグラスを揺らし、カランカランと氷が当たる音がする。私は目線を春兄の顔に構えてその続きを待った。


「あまり、必要以上に関わらないようにしてくれ。今までみたいにしょっちゅう会えないし、守りたくても守れない時もあるんだ。だから、藍にその気持ちをしっかりと持って欲しい」


「春兄…」


社会人と学生の壁だ。それも一年目だから、本人にかかる負荷も多いだろう。


ますます連絡を取っていることは言えなくなった。春兄のためにも、やっぱりここは自分がしっかりしないと。


「大丈夫!!春兄は春兄のこと、頑張ってやってよ!!」


作った笑顔を春兄に向けた。すると春兄はなんだか寂しそうに笑った。


「あと、山下には隙を見せないように」


「え、隙?」


「あぁ。絶対に」


私の目をしっかりと捉え、静かにそう呟いた。春兄の普段あまり感じない雰囲気に少々戸惑う。


「う…うん、わかった」


多分、山下さんと関わるのは私がバイト中の時だけだから、隙を見せる見せないに至らないと思う。


だけど、春兄のこの何かを考えながら言葉を選んでいるような様子にそう言うしかなかった。