…春兄はどうなのだろう。南さんと3年付き合っていたのだから、当然そういうことは…しているよね、きっと。


春兄と南さんのそのシーンを想像してしまいそうな自分が恥ずかしくなり、ぶんぶんと首を左右に振った。変態だ、変態すぎるぞ私。



春兄は…どう思っているのかな。私とそういうこと、考えているのかな。幼い頃から側にいた幼なじみと恋人になり、恋人らしいことが私には出来るのか少々不安に感じる。


河西くんと付き合っていた時は、軽いキスくらいは交わしたが、それだけだった。もちろん河西くんのことは大好きだったけれど、友達から始まる恋関係にお互い照れが生じていたのもまた事実で。


あぁ、自分の経験値の低さに嫌気がさしてくる。


充希にも学校で言われたんだ。これは、つい昨日の話…



-----…



『あんた、春人さんとどこまでした?』


『っ!?はい!?』


お昼休みの教室。普通のボリュームでそう問う充希に周りに聞かれていなかったか気にしながら目で『やめて!』と訴える。


小声で再び同じことを繰り返す充希に私は赤面。


『どこまでも…してないよ』


『は?まじ?チューは?』


『…してません』


いつもみたいに頭を撫でてくれたりするけれど、そういうことはまだ一度もない。やってハグだ。


『まじかよ…いや、だってさ、春人さんからしたら10年の片思いが実ったのよ?絶対嬉しいじゃん?その勢いでチューはするっしょ。溜まってるもん絶対』


『た、溜まってる?』


『そういう欲求が!絶対あるに決まってるじゃん!』


春兄が…何だか想像できない。私に対してそういう感情を抱いているのかと思うと不思議でたまらない。


『春人さんは何も言ってこないの?』


『うん、そもそも今は春兄、卒論の発表?みたいなので忙しいし』


『でもさ、春人さんだっていい歳した男よ?そういうこと全く考えてないってのはありえないから、藍も心の準備しておきなさい?』


キスに心の準備か…確かに、大人のキスみたいなのはまだ経験したことないし、それも必要かも。


『あ、今私とは別のこと考えてた』


箸で私を指す充希にハテナを浮かべて首を傾げる。するとニヤリと笑い、私の耳に顔を近づけて囁いた。


『…ロストバージン』


『!?』


その単語を聞いた途端紅潮し、充希の頭を思い切り弾いてしまった。


『いった!!』


『あ、ご、ごめん』