これは、私が追われる前の話。

中学三年生、私は頭が良くなかった。
そんな私が自慢できるたった一つのこと、
それは絵を描く事で友達を笑顔にすることが出来ることだった。
勉強ができない代わりに絵を必死に描いていた私は勿論頭は悪くなる一方だったけど、そんな事はどうでも良かった。
ただ、友達を笑顔に出来るのならば。
その一心で描いていた。
それが追われる一つ目の引き金になるとも知らずにね。
オリジナルのキャラクターを創り、そのキャラクターを紙に描いて操る。
それがとてつもなく楽しかった。
もちろんキャラクターには暗い過去が付き物だ。例えば家族や大切な人が殺されたり、自分を犠牲にしてまで助けたのに相手に裏切られたりなどというものだ。
そして私もそんな過去を自分のオリジナルのキャラクターに取り付けて物語を創っていた。
そのキャラクターの名前は彗華(すいか)。女の子で、その子は幼い頃に通り魔に目を刺されて左目には眼帯をしているという設定にしてい
た。
しかし、今考えるととてつもなく恐ろしい。
この設定にした私を多分一生恨んでも恨みきれないだろう。