「………こんなもんか」



1通り撮り終わり、携帯をポケットにしまって部屋を出ようと振り返ると……



………しまった。



「こんなところで何やってるのかなぁ?
天霧組さんよぉ」



見つかってしまった。



「死ねぇっ!!!」



スキンヘッドの男はそう気味悪く笑うと私に金属バットを振り下ろしてきた。



「っち」


物騒なもん持ってるね。

ここの連中はみんな持ってるのかな?


私はその金属バットを避けると、その反動で重心が前に傾いた相手の首にかかと落としをした。


「ぐっ…
まだまだぁ…」


…しぶとい。


その男は金属バットをところ構わず振り回し始めた。


危ないなぁ。

そんなんじゃ、当たらないって。

まぁ、骨の1本くらいあげてやってもいいけど。

私は避けながら距離を縮ませて行くと、右腕をあげて顔の横に来たバットを止めた。



ガンッ



「あぁん?」


「スカスカ」



それに気を取られている相手の溝を思いっきり殴ると、回し蹴りをしてアッパーをした。


「ぐぁはっ……はぁっ……はぁっ……」


相手はそこにだらしなく倒れた。



いてて。


ちょっと若さ溢れる行動をしちゃった。


「ねぇ、もうこんなとこにいるのはやめなよ。」


「はぁっ…はぁっ…」


既に息が切れていて意識が朦朧としている。


私はそいつの手から金属バットを取ると襖を破って外へ投げた。



「この世界から足は洗った方がいい。
きっと、そうしたほうが幸せだよ」



「はぁっ…お前にっ…何がわかる……」


「…わかんないよ、あんたのことなんて。
けど、もうこんなことしちゃダメだよ」



私は彼の左手の薬指に光るプラチナの指輪を指さす。



「絶対に、悲しんでる。
幸せにするっていうのは、こういうことじゃないと思うよ」



そして少し微笑んでそう言うと、その男の目から涙が溢れた。


あーあ。大きな大人がみっともないなぁ。



一つため息をつくと、ポケットから白いハンカチを出してそいつに渡した。


「…うぅっ……お前……何もんだよ……」


「ん?天霧組の、……天霧陽葵だよ
おじさん、ごめんね?はやく怪我、治るといいね」



私はそれだけ言ってその部屋を後にした。





久しぶりに、大人の涙を見たな。